開催報告 映画「バベルの学校」鑑賞対話会
「バベルの学校」鑑賞対話会
2017年5月27日(金)に映画「バベルの学校」の鑑賞対話会を実施しました。
今回は個別のお声がけを一切しなかったので数人での開催になるかな、と思っていましたが、当日参加の方も含めて8名での開催となりました。
フランスの移民状況を少し外観した後、映画を観て30分ほど感想を共有する時間を作りました。
今回は初めてお会いする方が多く、対話になるかどうか心配だったのですが、そんな心配は無用。それぞれ印象に残ったことや感じたことを率直にシェアしてくれました。
やはり、映画を観た後に少しでもいいので話す時間を持つのは良いなと思いました。
というのも、これは個人的な感想ですが、この映画はメッセージを絞り込まない作り方。色々な情報がバラバラと入ってくるので、話さないと整理ができない。逆に、話をすると色々な観点が映画の中に発見できたんだ、ということがわかって面白い。
フランスの移民政策
フランスでは15歳児の親の12%は外国出身だそうです。欧州の中でもこの比率は高く、よってフランスの移民政策が社会的にどのような影響を与えるのかは参考になるし興味深い。
EUは移民の子供に対して平等な処遇を与え教育を提供することを加盟各国に求めていますが、その実施は国が独自に行っています。歴史的に移民問題に直面してきた欧州は、5つの段階を経て移民政策を進めてきたと言われています。そんな中、フランスは一貫して「同化政策」を進めてきたと言われています。
「バベルの学校」は、ある一つの学校の適応クラスの事例ではあります。しかし、そのフランスの「同化政策」におけるクラスの「リアル」について示唆深い情報を提供してくれていると思います。
多様性に対する感度を養う環境
個人的に「なるほど」と思ったのは、クラスで宗教や人種の議論になって「地球は疑問だらけだから、地球の名前は「疑問」に変えた方が良い」という話になるシーン。宗教や人種の議論は一歩間違えば根深い断絶を生んでしまうものだけど、この適応クラスではそうはならなかった。なぜなら、生徒のバックグラウンドがあまりにもバラバラだから。全員がまるで異なるので、「○○ vs ○○」というような極の対立構造が出来ない。
これは、ダイバーシティ研究における「フォルトライン(断層)」理論で言われていることと非常に近いな、と思いました。多数の層が一つの方向に揃うと大きな断層になって断絶するけれど、層がバラバラに重なっていると断層にはならない、という考え方。(フォルトラインに関してはこちらの記事に少し書いています)
フランスへの同化を目的にしたクラスではあるけれど、この環境で学んだ子供たちは、社会の暗黙の前提を言語化する領域に踏み込んでいる。それは、多様性が増す社会の中で暮らしていく上で必ず役に立つ力になると感じます。
対話することで気づく
今回は参加者の皆さんとの対話を通じて様々な気づきを持つことが出来ました。「映像の作り方」という観点から、そもそもドキュメンタリー映画でのメッセージの埋め込み型に対して意識をすることもありました。実り多い時間でありました。
次回は、2017年6月23日(金)の19時から、「コスタリカの奇跡」を題材に鑑賞対話会をしたいと思います。
詳細はこちらから。