異文化マネジメント力を磨く6軸の視点|グローバルリーダーを育成する
海外で仕事をする人が増えている
グローバル化の進展に伴って、海外赴任など、長期にわたって国外で仕事をする人が増えています。
外務省が毎年発表している「海外在留邦人数調査統計」によれば、2015年10月段階での長期滞在(永住を除く)の邦人数は約86万人。1995年が46万人だったので、この20年で倍増に近い規模になっています。
内訳をみると、86万人のうち、アジア35万人、北米26万人、西欧15万人。この3地域で約9割。ここ数年の傾向は中国とブラジルで人数が減っているものの、ほとんどの国で長期滞在者数が増えています。
グローバルマネジメントは難しい
しかし、日本人にとってグローバルビジネスは簡単ではありません。人のマネジメントが非常に難しい。高い異文化マネジメント力を持った日本人のグローバルリーダーというのは極めて稀で、多くの人はグローバルビジネスの環境で相当の苦労をします。
「あうんの呼吸で仕事が進まない」
「自分の意見を主張するのが難しい」
「現地スタッフが働いてくれない」
といった日本人マネージャーの嘆きをよく耳にします。海外の日本食レストランに行くと、日本人駐在者が現地スタッフに対する不平不満を飲みながら言い合っているのを良く目にします。
かくいう私も、30歳の時にヨーロッパに赴任してとても苦労しました。チームをどう率いて良いのかわからない。上司とどう付き合えば良いのかわからない。
どうしても達成しなければならない売上・利益責任があるんだけど、何をするとヨーロッパ各国のスタッフがやる気になり、動くのかがわからない。
日本人にとってグローバルマネジメントが難しいのは当たり前
私は、日本人にとってグローバルマネジメントが難しいのは当たり前だと思います。なぜなら、日本で生まれ育った日本人は、子供の頃からの異文化体験が少なさすぎるからです。
多くの人にとって、英語は大人になってから学ぶ第二言語です。大人になってから英語を学ぶ場合、人は意識的に勉強時間をとって、英語を学ぶ必要があります。ボキャブラリーを覚え、文法を理解し、4つの技能(スピーキング、リスニング、リーディング、ライティング)を訓練しなくては英語は使えるようになりません。
しかし、帰国子女をはじめ、子供の頃に英語環境で育った人は事情が違います。意識的に勉強時間を取って英語を勉強しなくても英語が使えるようになる。
グローバルマネジメントも同じことだと思うのです。
つまり、子供の頃から異文化環境で育った人は、自分と異なる文化的背景/価値観を持つ人と協同し、物事を進めて行くことに慣れていると思うのです。もちろん、個人差はありますが、そういう環境で育たたなかった人に比べると慣れ方が違う。
日本は島国で、他国に比べると周囲に異文化が存在する程度が異なります。日本の中で同じ文化的背景を持つ日本人とだけの付き合いで完結する度合が高い。
この環境で大人になった日本人にとって、グローバルマネジメント力は英語力と同様、意識的に訓練する必要があるスキルだと思うのです。
グローバルリーダーとして意識的な訓練を行う
その際に大事になってくるのが、「訓練の仕方」です。
英語における訓練の考え方と一緒。義務教育を受けた日本人は全員英語の勉強をしています。しかし、英語を不自由なく使える日本人はごくごく一握りです。英語が出来るようになりたいと動機づけされ、長い時間訓練している人であっても、英語を不自由なく使える日本人は非常に少ない。
なぜか?
訓練の仕方が間違っているからです。
何をどういう順番でどこまで学ぶのか。InputとOutputのバランスをどのように取るのか。どれくらい反復練習を行うのか。そうした訓練方法のデザインを意識的に行うかどうかで学習効率が大きく変わります。
グローバルリーダーの訓練に関しても同じことが言えます。
グローバルリーダーとして、異文化環境で何を意識する必要があるのか。コミュニケーションの方法をどのように調整する必要があるのか。その訓練をどのように行っていくのか。そうした、訓練デザインの視点を持つかどうかで、どのくらい早く効果的にグローバルリーダーとしてのマネジメントスキルを身に着けられるかが変わります。
6軸の視点を持つことで文化的難しさを乗り越える
この、訓練デザインの参考になるのが理論やモデルです。そして、異文化マネジメントに関しては「ホフステードの6次元モデル」が非常に役に立ちます。
ホフステードは、オランダの比較文化学者で、この領域の第一人者です。著書の「多文化世界」は、文化的な違いを学び、異文化コミュニケーションに生かすための必読書です。
ホフステードが提示し、アップデートされた現在の6次元モデルでは、異文化を理解する為に6つの軸が提示されています。
①権威主義の程度差
②個人主義/集団主義の程度差
③男性性/女性性の程度差
④不確実性回避の程度差
⑤実用主義の程度差
⑥人生の楽しみ方の程度差
グローバルリーダーとして、異文化と接した時にどのような問題が起こり得るのか。6つの軸の得点を自文化と他文化とで比較することで、何に気を付ける必要があるのかが分かります。
また、そもそも日本文化とは何なのか。具体的、体系的に私達の文化を語ることも簡単ではありません。ホフステードのモデルは、私たちが自文化を理解し説明する際にも見通しの良い視座を提供してくれます。
最近、このホフステードの6次元モデルを用いた異文化マネジメント研修を様々な日本企業に提供することが増えてきました。
メーカー、金融、サービス、と業種を問わず、ビジネス相手国もアメリカ、欧州、アジア、と地域問わず、多くの方が深い気づきを持って帰られます。
文化という捉えどころのない概念を、数値化することによって客観視することで、この先どのような異文化マネジメントを行う必要があるのか重要な気づきを得て行きます。
私自身も、欧州赴任の前にこのモデルに精通していれば、もっと良いマネジメントが出来たのではないかと思います。
「文化を数値化する」ということ自体の良し悪しは当然あるし、異論もあります。それで文化のすべてが語れるわけではありません。しかし、この見方をあえてとることで見えてくることがあるのも確かです。
この知見、グローバルビジネスを推進するもっと多くの日本人の役に立ってほしいと思います。
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