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「コンサルの質問力」とは何か?(前編)

POSTED: 5月 8, 2017, 9:57 am

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問題の構造を掴む

3つの質問力シリーズの導入記事において、コンサルの質問の目的は、「物事の構造を明らかにすること」だと述べました。

ここでは、コンサルタント、特に戦略コンサルタントと呼ばれている専門職の質問力について紐解いていこうと思います。(下記、特に言及無ければコンサルタント/コンサル=戦略コンサルタントとする)

コンサルタントは、クライアントの企業経営における問題解決を依頼されます。この時、コンサルタント自身はクライアントの業界のエキスパートではないことが大半です。その為、クライアントが抱えている問題を取り巻く状況がどのような構造になっているのか、それを短期間で掴む必要があります。

よって、コンサルの質問力は問題解決を前提にしています。

問題とは何か?

では、そもそも問題解決における「問題」とは何でしょうか?

ここで、下記のような状況を考えてみましょう。この状況であなたはどのように問題を捉え、それを解決するでしょうか?

とあるオフィス街の真ん中に、73階建てのビルが建っている。利便性の良い場所にあるビルだが、入居したテナントたちの意見によればエレベーターのサービスがお話にならないほどひどい。テナントのうちには、エレベーターがいますぐ改善されなければ、出ていく、と言っている人も居る。

 

いくつかの関係事実を上げれば、次のとおりである。

 

      1.このビルには主として事務所が入っている。
      2.ビルは9時から5時まで開いている。
      3.財務畑の利用者が多い。
      4.入居者は1階から73階まで均等に居る。
      5.エレベーター利用度も均等。
      6.ビルの悪いうわさがひろがり始めている。

(出所 ドナルド・C・ゴースとジェラルド・M・ワインバーグ「ライト、ついてますか」より改変して掲載)

少し考えて、色々なアイデアが出るかもしれません。

      ①「エレベーターをスピードアップする
      ②「新しいエレベーターを増設する

といった、施設をアップデートするアイデアが出るかもしれないし、

      ③「労働時間をずらして、ラッシュアワーを平均化する

といった仕組みで対応するアイデアもあるかもしれません。また、

      ④「エレベーターホールのエレベーターの前に鏡を付ける

と言うアイデアが出るかもしれません。これは、エレベーター待ちをする際に鏡に意識が行き、待ち時間が気にならないようにする、心理作戦のアイデアです。

これは、ドナルド・C・ゴースとジェラルド・M・ワインバーグが1982年に書いた「ライト、ついてますか」という著作の冒頭の問いを少し変更したものです。

ゴースとワインバーグは、「問題」というものの位置づけについて詳しく考察をしています。

①~④のアイデアは、もし問題が「入居者のエレベーターに対する不満を解消する」ということであれば、良いアイデアかもしれません。

しかし、一歩引いて考えた時、ここで考えなければならない問題は、本当に「入居者のエレベーターに対する不満を解消する」ことでしょうか?

問題が明確になるまで、それを解いてはいけない

結論から言うと、それはわかりません。

例えば、先ほどの状況をビルのオーナーの視点から見てみると、「入居者のエレベーターに対する不満を解消する」ことは解くべき問題ではないかもしれません。なぜなら、オーナーはビルの建て替えを考えており、早く入居者に出ていってもらいたいと思っているかもしれないからです。その場合、入居者の不満が解消されない方が都合が良いかもしれない。

つまり、問題解決をする際には、まず「問題」をどう定義するのかよくよく考える必要があるのです。

コンサルタントは問題解決を仕事として行いますが、仕事に取り掛かる前に、次の2つの質問について深く考え、明確な答えを出します。すなわち、

      誰の問題なのか?
      何の問題なのか?

の2つです。この質問は非常に重要です。特に①の質問。

人は往々にして、それが「誰の問題なのか?」十分に考えずに問題解決を始めます。

企業経営のコンサルティングにおいて、例えば社長から「わが社は○○ということで困っている。なんとかして欲しい」という相談を受けたとします。この場合、○○という問題をこの会社の問題として考えるのは早すぎます。なぜなら、それはその社長の発言であり、もしかしたら社長の問題でしかないかもしれないからです。

この場合、社長の問題会社の問題を分けて考える必要があります。そして、「誰の問題」を解きに行くのか、コンサルタントとしては腹を決める必要があります。「会社の問題」を解きに行く場合、実は問題の根源は社長だったということが明らかになるかもしれません。その場合、本当に会社の問題を解決するのであれば、依頼者である社長に「辞めてもらう」ことが解になるかもしれません。

問題の主語は誰なのか。それを明確にするために、コンサルタントは上記の質問をするわけです。それが分るまで、コンサルタントは問題解決に着手しません。

目の前の問題が解くべき問題とは限らない

①の質問で、問題の主語が明らかになったら、次に②の質問に答えることによって、問題の詳細を明らかにしていきます。

例えば、次のような状況に直面したら、あなたはどのような質問をして何を明らかにしていくでしょうか。

10年来の友人が、ある会食の時に「ちょっと引っ越しをしたいんだよね。どこに引っ越すのが良いんだろう」と言ってきた。あなたは2年おきに引越しをしてきており、これまで住んだことのある街は10カ所以上。色々な街の良し悪しを知っています。

この場合も①誰の問題なのか?を聞くことは大切です。しかし、ここではそれは既に明確になっており、問題はこの友人のものだということがわかっていると考えて下さい。

引っ越し経験が豊富なあなたは、友人が求める引っ越し条件を明確にするために色々なことを質問するかもしれません。

      「間取りはどの程度が良いのか」
      「仕事場や学校への距離はどの程度が良いか」
      「部屋にあって欲しい設備は何があるか」

と言った、引っ越し先に求める条件について質問をすることもあるでしょうし、

      「入居時期はいつか」
      「家賃の予算はいくら位か」

と言った、そもそもの制約条件について質問をすることもあるかもしれません。

しかし、ここで大切なことは、②何の問題なのか?を明らかにするということは、必ずしもこうした詳細を聞くこととは限らないということです。なぜなら、目の前で言われた「引っ越し先をどこにするか」という「問題」は解くべき問題とは限らないからです。

ここで、友人に「なんで引越ししたいの?」と聞いてみましょう。

もしかしたら友人は「もっと快適に暮らしたいんだよ。部屋がイマイチ気に入らなくて」と言うかもしれません。「部屋の快適さに不満がある」ということが引っ越しの背後にある問題なのであれば、「引っ越し先を決めること」は必ずしも解くべき問題ではありません。なぜなら、「部屋のリフォーム」等によっても今の部屋の快適さは改善できる可能性が有るからです。

問題の空間的広がりを考える

このように、②なんの問題なのか?を明らかにすることとは、今解くべき本当の問題は何なのか?を明らかにするということです。

人間は、どういうわけか、目の前に「問題らしきもの」を提示されると、いきなりその解答を考え始める、という心の習慣を持っています。

その心の習慣から逃れるために、まず、①誰の問題なのか?を問うことで問題の主語を明確にし、②何の問題なのか?を問うことで、本当に解くべき問題が何なのかを突き止めていきます。

この時に、意識しておくと役に立つ質問のパターンがあります。それは「問題の空間的広がり」というもの。他の言い方をすると問題の「上下左右」です。

今この瞬間、相手が話していることの周りには「上下左右」の「空間的広がりがある」という意識をもって、その空間を開拓していく感じ。

その意識を持った状態では、相手の話を聞いて、次に自分がする質問はなのかなのか横(左右)なのかを考えて、意識的に行うことになります。

上・下・横の質問とは、

      上=目的、理由、エッセンス、を明確にする質問
      下=詳細を聞く質問
      横=幅出しをする質問

のことを意味します。

コンサル1

これを質問文で言うと、

      上=「何の為に?」「なんで?」「要するに?
      下=「具体的には?」「もうちょっと説明すると?
      横=「他には?

といったものになります。

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色々な方の質問のパターンを見ていると、多くの方が「下」の質問を多用します。相手の発言に対して「下」の質問をし、その後も「下」の質問をし続けるという方が多いように思います。

これはうまくない。

なぜなら、相手が最初に発言した内容は、そこまで深く掘り下げるべき点なのかどうか、わからないからです。

先ほどの、引っ越しの例がこれに当たります。「引っ越ししたい」という発言に対して、「どんな条件が良いのか?」「制約条件はあるか?」と聞く質問は具体化を促す質問なので「下」の質問に当たります。しかし、相手の本当の問題が「部屋の環境が悪い」ということが分かれば、実はそこまで引っ越しについて深堀する必要はないかもしれない。

上下左右の空間的広がりを意識した質問をする人は、少し「下」を聞いたら、すぐに「」・「」の質問をします。

引っ越しの例でいえば、
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という感じ。

」と「」の質問を有効に組み合わせると、その人が本当は何に問題を感じているのかが段々と見えてきます。この引っ越しの例で言えば、相手は部屋のことを立て続けに言っているので、「ああ、この人は今の部屋の環境に問題を感じているんだな」ということがわかる。

私が色々な方の質問のパターンを見る印象では、「横」の質問を使う方が本当に少ないように感じています。「上」の質問は、ロジカルシンキングのトレーニングでその重要性が言われることがあって使うこともありますが、「横」の頻度が少ない。「横」の質問は「幅を出す」質問で、今語られていることが本当に重要なのかどうか、判断する時にとても役立ちます。

具体的な質問も「他には?」と聞くだけなので、「横」の質問は有効に使うことをお勧めします。

兎にも角にも「解くべき問題」を突き止めることが出発点

このように②何の問題なのか?を考える時に、「上下左右」という「空間的広がり」を頭の中にイメージとして持っておくことは、本当に解くべき問題の発見に繋がります。

問題解決は、問題が正確に定義された段階で半分は解が出たのと同様です。それくらい、「解くべき問題」の明確化は大切。

コンサルのあらゆる質問力は、まずこの出発点があって初めて生きてきます。

今回は、「問題」についてじっくりと述べてきました。次回は、定義された問題を解くための質問の考え方について書いていきたいと思います。

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渡辺寧

AUTHOR:渡辺寧(わたなべ やすし)

慶応義塾大学文学部/政策・メディア研究科卒業後、ソニー株式会社に入社。7年に渡りマーケティングに従事。約3年の英国赴任を経てボストン・コンサルティング・グループに入社。メーカー、公共サービス、金融など、幅広い業界のプロジェクトに4年間従事。 2014年に独立し、現在は「人と組織が変わること」に焦点を絞ったコンサルティングに取り組んでいる。プライベートではアシュタンガヨガに取り組み、ヨガインストラクターでもある。

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